第9章 心に残る話 第50話「星影のワルツ」
友人というものは妙なことがきっかけで出来るもので、「あいつ変な野郎だな」と思っていて普段は口もきかなかった人でも、酒の取りもつ縁がきっかけで言葉を交わし、意気投合してしまったというようなことがよくある。
しかし、結婚、転勤などにより、年齢を重ねる毎に行動範囲が次第と狭まり、そういう機会にだんだん縁遠くなってしまうことは、何となく淋しい。
こうした中、養成研修普通科を受講することとなった。同じ立場である二十九人の仲間がいたから、相手にはこと欠かない。心いくまで飲み、心いくまで語り合うには十分だった。
このような巡り会いは、この殺伐とした世の中では、今後二度とないと思う。
地元の祭には、仲間と一緒にハッピをまとう鉢巻姿勇ましく、どしゃ降りの雨の中、神輿を担いで温泉街をもみ歩いた。景気づけの茶わん酒も手伝って、翌日はガラガラ声で散々だったが、バカ騒ぎのあとは親密度も一層深まった気がする。
養成研修普通科の分散会は近所の旅館で行った。
舎監の安斎さんは、
「将来も、良きにつき悪しきにつき、お互いに励まし合って更に友情を深めていってほしい」
とおっしゃっていたが、全員一致する気持ちであり、伝統ある普通科研修の精神でもあるような気がした。
酒宴の最後に安斎さんを囲んで「星影のワルツ」を歌ったら、思わず目頭が熱くなった。
この研修に参加させて頂いて、大変幸せであったとつくづく思う。