昭和40年代の営林局機関誌から選んだ「名作50話」

このブログは、昭和40年代に全国の営林局が発行した機関誌の中から、現場での苦労話や楽しい出来事、懐かしい思い出話などを選りすぐり編纂したものです。

第9章 心に残る話 第50話「星影のワルツ」

 友人というものは妙なことがきっかけで出来るもので、「あいつ変な野郎だな」と思っていて普段は口もきかなかった人でも、酒の取りもつ縁がきっかけで言葉を交わし、意気投合してしまったというようなことがよくある。

 しかし、結婚、転勤などにより、年齢を重ねる毎に行動範囲が次第と狭まり、そういう機会にだんだん縁遠くなってしまうことは、何となく淋しい。

 

 こうした中、養成研修普通科を受講することとなった。同じ立場である二十九人の仲間がいたから、相手にはこと欠かない。心いくまで飲み、心いくまで語り合うには十分だった。

 このような巡り会いは、この殺伐とした世の中では、今後二度とないと思う。

 地元の祭には、仲間と一緒にハッピをまとう鉢巻姿勇ましく、どしゃ降りの雨の中、神輿を担いで温泉街をもみ歩いた。景気づけの茶わん酒も手伝って、翌日はガラガラ声で散々だったが、バカ騒ぎのあとは親密度も一層深まった気がする。

 

 養成研修普通科の分散会は近所の旅館で行った。

 舎監の安斎さんは、

「将来も、良きにつき悪しきにつき、お互いに励まし合って更に友情を深めていってほしい」

とおっしゃっていたが、全員一致する気持ちであり、伝統ある普通科研修の精神でもあるような気がした。

 酒宴の最後に安斎さんを囲んで「星影のワルツ」を歌ったら、思わず目頭が熱くなった。

 この研修に参加させて頂いて、大変幸せであったとつくづく思う。

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