昭和40年代の営林局機関誌から選んだ「名作50話」

このブログは、昭和40年代に全国の営林局が発行した機関誌の中から、現場での苦労話や楽しい出来事、懐かしい思い出話などを選りすぐり編纂したものです。

第9章 心に残る話 第41話「収穫調査」

初霜の林道にエンジンの音が高鳴り

旋転する厚い敷砂利に

重心を失うまいと懸命にバイクを操る

 

山裾は末枯れ

色づいた木の間に

見え隠れする先兵の保安帽は幾筋か

 

 

あと幾日この地へ歩を運ぶのか

冷気漂う小暗い小径で

息絶え絶えにそんなことどもを語る

 

山脚の草木を命の綱として

最後の沢の深淵を迂回し

なおも笹の密生地を突き進む

 

ひらひらと舞うホオの葉

滴る露と吹き出る汗を拭いつつ

眉を寄せて作業の段取りを認め合う

 

ハナイタヤの色に放心するもの束の間

「さあ、ゴーだ」

清らかな木漏れ日にきらりと輪尺が光る

 

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