第9章 心に残る話 第41話「収穫調査」
初霜の林道にエンジンの音が高鳴り
旋転する厚い敷砂利に
重心を失うまいと懸命にバイクを操る
山裾は末枯れ
色づいた木の間に
見え隠れする先兵の保安帽は幾筋か
あと幾日この地へ歩を運ぶのか
冷気漂う小暗い小径で
息絶え絶えにそんなことどもを語る
山脚の草木を命の綱として
最後の沢の深淵を迂回し
なおも笹の密生地を突き進む
ひらひらと舞うホオの葉
滴る露と吹き出る汗を拭いつつ
眉を寄せて作業の段取りを認め合う
ハナイタヤの色に放心するもの束の間
「さあ、ゴーだ」
清らかな木漏れ日にきらりと輪尺が光る