昭和40年代の営林局機関誌から選んだ「名作50話」

このブログは、昭和40年代に全国の営林局が発行した機関誌の中から、現場での苦労話や楽しい出来事、懐かしい思い出話などを選りすぐり編纂したものです。

第1章 現場から 第5話「昼のいこい」

 担当区主任の楽しみの一つに、現場の作業員と食べる昼食がある。

 午前中の仕事の疲れをとり、空腹を満たす。この時間の仕事の話に混じった雑談がまた面白いもので、飲む話から食べる話、遊ぶ話にさては女性の話と、時がたつのも忘れるほどである。

 

 「主任さん! 主任さんほどええ仕事はないのう。たまに山に来て、ええ運動になるし、ええ空気は吸えるし」

 「あほう言いな。こんな合わん、馬鹿みたいな仕事はないぜよ。上のもんにはやかましゅう言われたり、怒られたり。下のもんには文句を言われてあわん仕事よ、おまんらあのほうがずっとましよ。鎌を一日振っていたらええ賃になって。奥さんばあのもんじゃろうがよ、おまんにやかましゅういうたり、おこるもんは」

 「わしらあは鎌を振るしかのうのない男よ、おかあの腹から出てくる時から鎌を下げて出てきちょるきに。主任さんはエンピツとソロバンを下げて出てきつろう」

 「あほう言いな、まあ一升徳利よ、ハハハ・・・」

 

 また、ある作業員が言う。

 「主任さんは、若いきにええのう、これから先なんでもなれるきに」  

 「そんなことがあるかよ、こんな仕事をして小使いで終わりよ」

 「そりゃ、違えぜよ。わしらあばあ年がいっちゃせんきに、わしらあばあ年がいったらもういかん」

 「そんなに年もいっちゃあせんがあ、まだまだこれからよ」 

 「いや、もういかん・・・けんど、わしらあも若いときゃ、何ぞにならんといかんと思いよったが、そうこうするうちにおじいになったが」

 「ハハハ・・・ありゃ、もうこんな時間かよ。ほんだらそろそろ仕事を始めるかよ」

 

 レクリェーションにもなり、安全作業にもつながり、私の唯一の楽しみである。

 

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