第1章 現場から 第5話「昼のいこい」
担当区主任の楽しみの一つに、現場の作業員と食べる昼食がある。
午前中の仕事の疲れをとり、空腹を満たす。この時間の仕事の話に混じった雑談がまた面白いもので、飲む話から食べる話、遊ぶ話にさては女性の話と、時がたつのも忘れるほどである。
「主任さん! 主任さんほどええ仕事はないのう。たまに山に来て、ええ運動になるし、ええ空気は吸えるし」
「あほう言いな。こんな合わん、馬鹿みたいな仕事はないぜよ。上のもんにはやかましゅう言われたり、怒られたり。下のもんには文句を言われてあわん仕事よ、おまんらあのほうがずっとましよ。鎌を一日振っていたらええ賃になって。奥さんばあのもんじゃろうがよ、おまんにやかましゅういうたり、おこるもんは」
「わしらあは鎌を振るしかのうのない男よ、おかあの腹から出てくる時から鎌を下げて出てきちょるきに。主任さんはエンピツとソロバンを下げて出てきつろう」
「あほう言いな、まあ一升徳利よ、ハハハ・・・」
また、ある作業員が言う。
「主任さんは、若いきにええのう、これから先なんでもなれるきに」
「そんなことがあるかよ、こんな仕事をして小使いで終わりよ」
「そりゃ、違えぜよ。わしらあばあ年がいっちゃせんきに、わしらあばあ年がいったらもういかん」
「そんなに年もいっちゃあせんがあ、まだまだこれからよ」
「いや、もういかん・・・けんど、わしらあも若いときゃ、何ぞにならんといかんと思いよったが、そうこうするうちにおじいになったが」
「ハハハ・・・ありゃ、もうこんな時間かよ。ほんだらそろそろ仕事を始めるかよ」
レクリェーションにもなり、安全作業にもつながり、私の唯一の楽しみである。