昭和40年代の営林局機関誌から選んだ「名作50話」

このブログは、昭和40年代に全国の営林局が発行した機関誌の中から、現場での苦労話や楽しい出来事、懐かしい思い出話などを選りすぐり編纂したものです。

国有林

第1章 現場から 第8話「担当区主任」

営林署の担当区は、たいがい本署から離れた村落に位置し、比較的小さな部落にあることが多い。部落の住民とは各種事業の雇用や、自家用薪炭の売払などで密接に結ばれているが、従前のように官尊民卑の気質はなくなったとしても、純朴な住民にはまだまだ担当…

第1章 現場から 第7話「わしらの植えた山はどうなったろう」

明治三二年から大正十年までの国有林野特別経営事業は、我が国はもとより、世界の林政史上においても特筆すべき大事業であった。この事業の完成によって、国有林経営の基礎が出来上がり、今日の国有林野事業特別会計の大きな財源となっていることは今更言う…

第1章 現場から 第6話「冬のパイロットフォレストを守る人たち」

標茶営林署から二十二キロメートル。湿原地帯に阻まれたため、かつては人跡未踏と言われたこの無立木地も七千二百ヘクタール余りの巨大な造林地となった。 事業の最盛期にはたくましい機械の音に加え、連日、見学に訪れる人たちで活気を呈するこのパイロット…

第1章 現場から 第5話「昼のいこい」

担当区主任の楽しみの一つに、現場の作業員と食べる昼食がある。 午前中の仕事の疲れをとり、空腹を満たす。この時間の仕事の話に混じった雑談がまた面白いもので、飲む話から食べる話、遊ぶ話にさては女性の話と、時がたつのも忘れるほどである。 「主任さ…

第1章 現場から 第4話「ナンコ」

発電所が鳴らす五時のサイレンが聞こえてくると、短い冬の日の太陽は、早くも峰筋の保護樹帯の上に傾いていた。 二十ヘクタールに及ぶこの小班の植え付けは今日で全部終わり、明日からの作業は反対側の谷へと移動する。 「寒いなあ、一杯やろうか。今日でこ…

第1章 現場から 第3話「雑草に挑む」

五時三十分に雨戸を開ける。家の前には標高四百メートルの前岳国有林。 その頂きには朝日が当たり、空は青く澄んで雲ひとつない。 今日で何日、雨が降らないのであろうか。 慌ただしく朝食を済ますと車に飛び乗り、作業現場へと急ぐ。林道の終点から、谷川に…

第1章 現場から 第2話「不思議な灯」

昭和二七年十月。当時私は、鳥取営林署管内の霧ヶ滝森林鉄道敷設工事の監督補助員として、主任と共に現場近くの山小屋に起居していた。 バスの終点である田中部落から二キロ奧に貯木場があり、そこから森林鉄道で再び二キロ上がった川向かいにその山小屋があ…

第1章 現場から 第1話「ある入山日」

深い雪に埋もれたここ金木戸にも、ようやく春が訪れた。四月一日、神岡営林署金木戸製品事業所の入山日である。 標高九百九十メートルにある中の又事務所の積雪は五〇センチほどであるが、標高千三百二十メートルに位置する作業員宿舎は例年、三メートルもの…