昭和40年代の営林局機関誌から選んだ「名作50話」

このブログは、昭和40年代に全国の営林局が発行した機関誌の中から、現場での苦労話や楽しい出来事、懐かしい思い出話などを選りすぐり編纂したものです。

2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

第4章 仕事と趣味 第24話「釣魚賛歌」

渓流の岩陰から、泡立つ淵目がけて愛竿を振る。理屈も何もいらない。それだけで満足である。 川鳥が川面をすれすれに飛んでは岩陰に隠れる。淵の上の梢に止まっているカワセミが真下に飛び小魚をくちばしにはさんでいく。 こんな日はたいてい鈞果良好と判断…

第4章 仕事と趣味 第23話「日本シダの会採取記」

第五回日本シダの会採集会が、屋久島につぐシダの宝庫として知られる薩肥国境の大口市布計国有林において、徳島と九州各県から約四十人が参加して盛大に開催された。 北薩の 布計の深山に 集い来し 吾等シダ人 まなこ輝く 布計駅前から小学校の方に採取に向…

第4章 仕事と趣味 第22話「熊撃ち」

「旦那さん、熊狩りにいかネスか。奧の部落の人方が是非にって」 と前の日の昼下がりに声がかかる。 興味津々である。 早速鉛の実弾を用意し、金かんじき、防寒着等の準備を始める。 翌朝五時、快晴。 頑丈な体つきの若者に交じって、部落の長の命令のもと出…

第4章 仕事と趣味 第21話「スポーツ王国 青森林友」

青森営林局が「青森林友」の名の下にスポーツ各界に目覚ましい活躍を遂げたのは、昭和初期から太平洋戦争が起こった翌年の昭和一七年までである。スポーツ王国を誇った青森林友も、太平洋戦争で息の根を止められた。 もっとも、戦後、野球部やスキー部はいち…

第3章 営林署から 第20話「ある見送り」

私が現場にいた時、一人の署長が退職した。誠実で責任感が強く、本当に人徳豊かな人物であっただけに、突然の退職は惜しまれるところがあった。 いよいよ任地を去る日に、見送りに行くべく単車の準備をしていると苗木が送られてきた。時間が差し迫っていたが…

第3章 営林署から 第19話「奥日光のシカ」

私は、国有林の仕事を通じて、妙に動物たちとつきあうことが多かった。 シカとイタチとウシ。そして、これは間接的ではあるが国際保護鳥のトキである。 シカは狩猟用として、イタチは野ネズミ退治用として、ウシは肉用牛として、それぞれの増殖に携わり、ま…

第3章 営林署から 第18話「もしもし、ここの渓谷の植物は採ってはいけませんよ」

観光地を訪れる登山客、散策者は十人十色、千差万別である。 登山道にしゃがみ込み、可憐な草花をじっくり眺めては立ち去るマナーの良い人もいれば、ビニール袋を取り出しては「ちょっと失敬」と持ち去ろうとする人もいる。 本格的な盗掘行為はさておき、国…